三鷹の弁護士による不貞慰謝料請求の因果関係についての解説

今回は,不貞以外にも離婚理由がある場合について解説していきます。
今回の結論は,
不貞とは別原因で離婚した場合には,
・離婚後には不貞慰謝料請求が認められない可能性があること,
・慰謝料が認められたとしても減額要素になりうる
ということです。

【事例】
配偶者と性格が合わず離婚に関する話しが進み,性格の不一致を理由に実際に離婚した。
ところが,離婚した後に,実は婚姻中に(元)配偶者が不貞していたことが発覚した。
配偶者に対する慰謝料請求は認められるか。

【解説】
1 不貞の慰謝料請求が認められるためには,不貞が原因で夫婦関係が悪化したという関係が必要です。
法律用語では,不貞と夫婦関係の悪化との間に因果関係が必要という説明になります。

不貞が夫婦関係の悪化に影響していない(因果関係がない)場合には,理論的には不貞慰謝料請求は認められないことになります。

2 事例の場合,性格の不一致を理由に実際に離婚した後に,(元)配偶者が婚姻期間中に不貞していたことが発覚したというものです。

離婚の理由は性格の不一致ですので,不貞があったから離婚に至ったという関係にはなく,不貞と離婚の間に因果関係はないため,慰謝料請求は認められないということになりそうです。

離婚してはいない事案ではありますが,実際,因果関係を否定した裁判例(慰謝料0円)があります(東京地方裁判所平成26年ワ11322号)。

「被告Y1は、原告と別居し(別居①)、被告Y2と交際②を開始したところ、平成14年に原告と同居を再開しており、この間、複数回にわたって原告及び長男と家族旅行に出かけるなどしているのであって、これによれば、原告・被告Y1間の婚姻関係は、原告が……交際②を開始した時点においては、いまだ破綻していなかったというべきである。」
「認定事実のとおり、被告Y1は、平成16年9月に別居②を開始しているところ、原告は、被告Y1と結婚して半年を経過した頃から、被告Y1に対し、両家の格の違いや被告の妹が精神疾患を患っていたことを批判し、交際①を解消した後も被告Y1に対する批判を続けたこと、その後、被告Y1は、原告と同居を再開したものの、原告の気性が合わず、別居②を開始していることからすれば、原告・被告Y1間の婚姻関係の破綻の原因は、両者間の性格の不一致にあるというべきであって、これに交際②が影響を与えたことを認めるに足りる証拠はない。」

上記の裁判例は,不貞と夫婦関係の悪化との間に因果関係がないことから賠償請求を否定しています(慰謝料は0円ということです)。

上記裁判例は,不貞を知らなかった,という事案ではなく,単に不貞と夫婦関係の悪化との間の因果関係を否定したという事例です。

とはいえ,そうしますと,事例1でも不貞を知ったのは離婚をした後ですから,離婚と不貞との間に因果関係はなく,慰謝料請求は否定されることになりそうです。
しかし,このような場合でも慰謝料請求を認めた裁判例があります(東京地裁平成27年ワ31582号)。

「原告と原告元夫の婚姻期間は約4年5か月であること,被告と原告元夫との本件不貞行為の期間は平成26年3月末頃から約1年にわたること,被告は交際当初から原告元夫に妻がいることを認識していたこと,……原告は離婚の際に原告元夫と被告が本件不貞行為をしていたことを知らなかったこと……が認められる。
上記認定事実その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件不貞行為により原告は一定程度の精神的苦痛を受けたものといえ,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料額は70万円と認めるのが相当である。」

上記裁判例では,原告は離婚した際に配偶者が不貞をしていることは知らなかったと認定しています。
そうだとすれば,不貞と夫婦関係の悪化(ないし離婚)との間には因果関係はないということになり,慰謝料請求は認められないという結論になりそうです。
しかし,上記裁判例では慰謝料請求を認めています。

この裁判例の分析を目にしたことがないので完全な私見となりますが,不貞の事実を知らなかったとしても,配偶者が不貞をしていることそれ自体によって夫婦関係に悪影響が生じているものと捉えている可能性があるのではないかと考えています。

とはいえ,上記裁判例でも,不貞関係を知らなかったことは慰謝料の減額要素方向の事実と評価されているものと思います。

結論としては,
不貞とは別原因で離婚した場合には,
・離婚後には不貞慰謝料請求が認められない可能性があること,
・慰謝料が認められたとしても減額要素になりうる
ということです。

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有責配偶者からの離婚請求は認められるのか

【質問】
有責配偶者からの離婚請求があった場合,この離婚請求は認められるのでしょうか。

【解説】
やや複雑ですので,順を追ってみていきましょう

1 有責配偶者からの離婚請求があった場合,
そもそも,婚姻関係が破綻していなければ離婚請求は認められません。
そのため,婚姻関係が破綻していないと判断された場合,そもそも離婚請求が認められません。
有責配偶者の話は出てこないことになります。

2 一方,婚姻関係が破綻してしまっている場合には,有責配偶者の話が出てきます。
仮に婚姻関係が破綻していたとしても,有責配偶者からの離婚請求は認められない!という主張です。

原告が有責配偶者であることは,被告側で立証する必要があります。
被告側で原告が有責配偶者であることを立証できなければ,離婚請求が認められることになります。
一方,被告側で原告が有責配偶者であることを立証できれば,離婚請求は認められないという結果になるのが原則です。

3 もっとも,有責配偶者であったとしても,夫婦間の別居期間が相当の長期間に及び,かつ,経済的に独立していないお子さん(未成熟子)がいない場合には,有責配偶者からの離婚は認められることになるのが原則です。

4 しかし,さらにどんでん返しがあり,
被告側にて,離婚が認められてしまうことによって,被告が経済的に苛酷な状態におかれてしまう等の特段の事情がある場合には,離婚請求は認められないことになります。
一方,このような特段の事情がない場合には,有責配偶者からの離婚請求であっても,離婚が認められることになります。

5 ややこしいですが,
結論的には,有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則だが,例外的に離婚請求が認められることがある,
と理解していただければ大丈夫です。

有責配偶者から離婚訴訟が提起された場合の対応

【質問】
いわゆる有責配偶者からの離婚請求を受けた場合の対応,配偶者が有責配偶者の場合,どのように対応することになるのでしょうか。
小さいお子さんがいる家庭で,財産を多く持っている夫側が不貞をしたにもかかわらず,夫が離婚請求した場合について考えます。

【解説】
一般論として,有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則です。
つまり,夫が離婚訴訟を提起したとしても,裁判所は離婚を認めないのが原則となります。
そうしますと,離婚訴訟を提起された側(被告側)としては,離婚したくないのであれば,シンプルに離婚請求を拒否することになります。
この場合,離婚を拒否することになるので,財産分与どうのという話にはなりません,

しかしながら,実際の訴訟で夫が有責配偶者であると認定されるかは最後(判決)までわかりません。
仮に裁判所が夫側を有責配偶者であると認定せず,さらに裁判所が婚姻関係が破綻していると判断した場合には,裁判所は離婚を認めることになります。
この時,財産分与などの審理はなされていませんので,財産分与などについて裁判所は判決で言及しません。
つまり,シンプルに離婚を認める,という判断が出るのみとなります(親権についても判断がなされます)。

仮に裁判所が離婚を認めてしまった場合であっても,財産分与等を受けられるようにするるためには,訴訟中に,予備的に財産分与の申し立てをしておく必要があります。

不貞をした夫からの離婚請求は絶対に認めたくない,
予備的にであっても財産分与の申立てをするのは弱腰じゃないか,
と思う方もいらっしゃるかとは思います。

最終的にはご本人の判断となりますが,紛争を後に残さないようにするためにも,有責配偶者からの離婚請求があった場合には,予備的に財産分与等の申立てをすることをお勧めします。

特別受益がある場合の相続額の計算を教えてください

【質問】
父が死亡しました。
相続人は,母,私(父の子),妹の3人です。
父死亡時の遺産は3000万円でした。
父は,生前,妹に対して,妹が住むための家の購入費用の援助として500万円の援助をしていました。私はそのような援助はしてもらっていません。
この場合の,母,私,妹が相続することになる額はいくらになるのでしょうか。

【結論】

具体的な取り分は
  お母様が1750万円
  あなたが875万円
  妹さんが375万円
  (合計3000万円)
  ということになります。

【理由】
 お父様から妹さんへの住宅購入費の援助は,特別受益となります。
 特別受益がある場合の,各人の取り分の計算順序は以下のとおりとなります。
 1 まず特別受益がある場合は,その額を遺産に加算してみなし相続財産を算出します。
 2 次に加算後の財産(みなし相続財産)を法定相続分で各人に割り付けます
3 特別受益を受けている方は,その割り付けられた額から特別受益の額を差し引くことになります。

 本件に当てはめてみますと
1 まず,遺産3000万円に特別受益額500万円を加算することになりますので,みなし相続財産は3500万円ということになります。
 2 次にこの3500万円を法定相続分で割り付けます。
   お母様の法定相続分は2分の1ですので,1750万円になります。
   あなたの法定相続分は4分の1ですので,875万円になります。
   妹さんの法定相続分は4分の1ですので,875万円になります。
3 妹さんは特別受益を受けていますので,875万円から500万円を差し引くことになります。そのため,妹さんの取り分は375万円になります。
4 結論として,具体的な取り分は
  お母様が1750万円
  あなたが875万円
  妹さんが375万円
  (合計3000万円)
  ということになります。

代襲原因が発生する前の代襲者への贈与は特別受益となるか

【質問】
 祖父が死亡しました。
 祖父の相続人は本来は,祖父の息子(私から見ると私の父)と,祖父の娘(私からみればおば)の2人なのですが,祖父が死亡する前に,祖父の子である私の父は既に亡くなっていましたので,実際の相続人は,私とおばの2人になります。
 私は,私の父が存命中のときに,祖父から多額の金銭的援助を受けました。
 おばは,この金銭的援助が特別受益にあたるので私の相続の取り分は少なくなると主張しています。
 そうなのでしょうか

【結論】
 特別受益には該当せず,取り分が少なくなるということにはならない可能性が高いです

【理由】
 本件では,
1 まず,あなたのお父様が亡くなり
2 その後お父様のお父様(お祖父様)がお亡くなりになっています。
 このような場合,お祖父様の相続では,あなたが相続人となります(あなたは,代襲相続人と呼ばれます)。
 お父様が健在時にお祖父様からあなたになされた生前贈与(代襲原因が発生する前の代襲者:ご質問者の方への生前贈与)は,特別受益にあたらないという見解が通説となっています。そのため,金銭的援助が特別受益にあたる可能性は低く,取り分が少なくなるということにはならない可能性が高いです。
 一方,ご質問のケースとは異なりますが,あなたのお父様がお亡くなりになった後(あなたが相続人になった後)にお祖父様からご質問者の方へ多額の金銭的援助がなされていた場合は,特別受益に該当することになる可能性が高いので,あなたの取り分が少なくなることになる可能性が高いです。

結婚前の浮気を理由に離婚できますか

【質問】
私は,数年間の交際期間を経て,最近結婚しました。
配偶者は,私と交際していた期間に,他の方と肉体関係にあったことがわかりました。
不貞行為を理由に離婚できるでしょうか。

【結論】
結論的には,不貞行為を理由に離婚することはできません。

【解説】
民法770条1項1号には,配偶者に不貞行為があったときに離婚の訴訟提起ができると定めています。
そうすると,ご質問を前提としますと,配偶者の方に不貞行為があったとして訴訟提起をした場合,離婚が認められそうにも思えます。

しかし,不貞行為が離婚事由となるのは,婚姻期間中かつ婚姻関係が破綻する前に不貞行為が行われた場合に限られるという解釈がなされています。
そのため,不貞行為が婚姻前に行われた場合には,民法770条1項1号にいう不貞行為には該当しないことになり,したがって,不貞行為は離婚事由にはなりません。

よって,婚姻前に第三者の方と肉体関係にあったとしてもこれを理由に離婚することはできません。