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三鷹の弁護士による不貞慰謝料請求の因果関係についての解説

離婚・男女問題2022.12.06

今回は,不貞以外にも離婚理由がある場合について解説していきます。
今回の結論は,
不貞とは別原因で離婚した場合には,
・離婚後には不貞慰謝料請求が認められない可能性があること,
・慰謝料が認められたとしても減額要素になりうる
ということです。

【事例】
配偶者と性格が合わず離婚に関する話しが進み,性格の不一致を理由に実際に離婚した。
ところが,離婚した後に,実は婚姻中に(元)配偶者が不貞していたことが発覚した。
配偶者に対する慰謝料請求は認められるか。

【解説】
1 不貞の慰謝料請求が認められるためには,不貞が原因で夫婦関係が悪化したという関係が必要です。
法律用語では,不貞と夫婦関係の悪化との間に因果関係が必要という説明になります。

不貞が夫婦関係の悪化に影響していない(因果関係がない)場合には,理論的には不貞慰謝料請求は認められないことになります。

2 事例の場合,性格の不一致を理由に実際に離婚した後に,(元)配偶者が婚姻期間中に不貞していたことが発覚したというものです。

離婚の理由は性格の不一致ですので,不貞があったから離婚に至ったという関係にはなく,不貞と離婚の間に因果関係はないため,慰謝料請求は認められないということになりそうです。

離婚してはいない事案ではありますが,実際,因果関係を否定した裁判例(慰謝料0円)があります(東京地方裁判所平成26年ワ11322号)。

「被告Y1は、原告と別居し(別居①)、被告Y2と交際②を開始したところ、平成14年に原告と同居を再開しており、この間、複数回にわたって原告及び長男と家族旅行に出かけるなどしているのであって、これによれば、原告・被告Y1間の婚姻関係は、原告が……交際②を開始した時点においては、いまだ破綻していなかったというべきである。」
「認定事実のとおり、被告Y1は、平成16年9月に別居②を開始しているところ、原告は、被告Y1と結婚して半年を経過した頃から、被告Y1に対し、両家の格の違いや被告の妹が精神疾患を患っていたことを批判し、交際①を解消した後も被告Y1に対する批判を続けたこと、その後、被告Y1は、原告と同居を再開したものの、原告の気性が合わず、別居②を開始していることからすれば、原告・被告Y1間の婚姻関係の破綻の原因は、両者間の性格の不一致にあるというべきであって、これに交際②が影響を与えたことを認めるに足りる証拠はない。」

上記の裁判例は,不貞と夫婦関係の悪化との間に因果関係がないことから賠償請求を否定しています(慰謝料は0円ということです)。

上記裁判例は,不貞を知らなかった,という事案ではなく,単に不貞と夫婦関係の悪化との間の因果関係を否定したという事例です。

とはいえ,そうしますと,事例1でも不貞を知ったのは離婚をした後ですから,離婚と不貞との間に因果関係はなく,慰謝料請求は否定されることになりそうです。
しかし,このような場合でも慰謝料請求を認めた裁判例があります(東京地裁平成27年ワ31582号)。

「原告と原告元夫の婚姻期間は約4年5か月であること,被告と原告元夫との本件不貞行為の期間は平成26年3月末頃から約1年にわたること,被告は交際当初から原告元夫に妻がいることを認識していたこと,……原告は離婚の際に原告元夫と被告が本件不貞行為をしていたことを知らなかったこと……が認められる。
上記認定事実その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件不貞行為により原告は一定程度の精神的苦痛を受けたものといえ,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料額は70万円と認めるのが相当である。」

上記裁判例では,原告は離婚した際に配偶者が不貞をしていることは知らなかったと認定しています。
そうだとすれば,不貞と夫婦関係の悪化(ないし離婚)との間には因果関係はないということになり,慰謝料請求は認められないという結論になりそうです。
しかし,上記裁判例では慰謝料請求を認めています。

この裁判例の分析を目にしたことがないので完全な私見となりますが,不貞の事実を知らなかったとしても,配偶者が不貞をしていることそれ自体によって夫婦関係に悪影響が生じているものと捉えている可能性があるのではないかと考えています。

とはいえ,上記裁判例でも,不貞関係を知らなかったことは慰謝料の減額要素方向の事実と評価されているものと思います。

結論としては,
不貞とは別原因で離婚した場合には,
・離婚後には不貞慰謝料請求が認められない可能性があること,
・慰謝料が認められたとしても減額要素になりうる
ということです。

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